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赤ん坊とオレ エピソード1

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3月10日(土)AM11:14

 
 
爽やかな風を感じる暖かい休日
 
 
オレは焦っていた。
 
 

(ど、どこだ?どこにあるんだッ!?)
 
 
 
辺りをいくら探しても見つからない。
しかしもうタイムリミットは迫っているのだ
 
 
 
それでもオレは、走るわけにはいかなかった




 
腕の中に、
 


 
大切な赤ん坊を抱いていたのだ!


 
 
 
 

3月9日(金)PM15:00

 
 
我が家に赤ん坊が生まれて約1か月、

 
献身的に我が子の面倒を見てきた妻は精神的にも外見的にもボロボロになっていた。
 
 

 
 
「子供は見てるから明日は一日、好きなように遊んでおいで」
 


 
そう提案したところ、返ってきた答えが
 


 
「一日なんていらないから、美容院に行かせて」
 


 
だった。
 
 


人気の美容院だから前日に予約など取れないと思っていたが
 
 
ダメ元で電話したら、たまたまキャンセルがあって明日のAM11:00なら入れるらしい。


 
 
「時間厳守で、だって」


 
 
妻は電車で行くと言っていたのだが、まだ出産で失った体力も回復しきっていない。
 
電車で行けば30分のところだが、1時間かけて車で送ることにした。
 

 

そのささいな決断が、後にあんな悲劇を生むことになるとは
 

この時オレは、知る由も無かった


 


3月10日(土)AM10:30



オレ達は渋滞にはまっていた
 
 

土日の鎌倉街道が渋滞するのはわかっていたから
余裕を見て1時間半前に家を出た



しかしこの日の渋滞は特に酷かった
土曜日だというのに工事をしていたのだ
 
 

 
毎年3月は道路工事が多くなる。


 
お役所の予算は使い切らないと次の年に減らされてしまうから、3月には無駄な道路工事が多くなるって、むかし親父が言っていたのを思い出した。

 

事の真相はわからないが、確かに3月は工事が多い。
 




 

3月10日(土)AM10:45



相変わらず渋滞が続いていた
 

 
それでも、美容院まではあと少し。
これならなんとか間に合いそうだ



 
 
だが、


オレの心配は別のところにあった。
 



 
実は数分前からヤツの気配に気づいていたのだ
 



 
そう、強力な BEN-I だッ
 
 



初めはさして気にもならなかった。

しかし、時間と共にヤツの存在感は急速に増していき、あっという間にオレの腹部をえぐるほどの刺激を発してきたのだ





(これはまずいッッ!)




 
原因はわかっていた。
 

ヨーグルトだ


 
花粉症が軽減されるらしいと買ってあったヨーグルトの賞味期限が迫っていた
 
 
朝食代わりにと食べたのは良かったが、食べ過ぎた



『1日100gを目安に』と書かれているのに400gを全て食べた。

含まれるビフィズス菌はなんと400億個
 
 
 



3月10日(土)AM11:00



時間は本当にギリギリだったが、なんとか美容院まで妻を送り届けることができた



 
しかしオレの腹もギリギリだった
もはや一刻の猶予も無い




近くのスーパーの駐車場に急いで向かう



「美容室の駐車場は無いけど、そこで2,000円以上買えば2時間無料になるから」と妻に言われていたのだ
 
 
駐車場を見つけるとスムーズに車を突っ込んだ
 



(ニヤリ)


オレは勝利を確信した


 
ここまでくればもう安心。
トイレまではあとわずか

 

店の入り口からダッシュで奥に行き、階段を駆け上がってトイレに入り、ズボンとパンツを降ろして用を足す。



ルートは頭に入っているし、シミュレーションも完璧に出来ていた
 
 
 
 
車の鍵をかけ、走り出そうとした瞬間
 




思い出した。
 
 




腹痛のあまり完全に忘れていた
 
 
 
 
チャイルドシートで爆睡している我が子の存在を


 
 


3月10日(土)AM11:08



思いのほか手間取ったが、やっと我が子を取り出すことに成功した!


チャイルドシートから子供を取り外すのは慣れていないと難しい。


さらに難しくしていたのは焦る気持ちだ。

キュルキュルと音を立てて鳴る腹痛に平常心は無くなりつつあったのだ。
 

 

 
しかし誤算は続く



両腕に我が子を抱えた状態ではダッシュすら出来ないことに気づいたのだ。


 
 
(競歩だッ!)
 
 
 
 
(競歩のように歩くしかないッ!!)
 
 
 
 
 
赤ん坊を両腕に抱えながら、腰から下に意識を集中させて脚を動かす。やったことがある人はわかると思うが、競歩の歩き方は極端に脚の筋肉を疲弊する
 
 


悲鳴をあげる HIRAME-KIN


振動で緩む KO-MON


負けずに締める KATSU-YAKU-KIN 
 
 
 
 
 
 
(見えた!トイレだッ!!オレの勝ちだッ!)
 
 
男子トイレの個室は3つ。
全て空いていた


(よし!オールクリア!)


 
 
 
 
中に入り、ズボンを下ろそうとした
 
 
 
その時、気づいた
 
 
 
・・・あれ?赤ん坊どうすんだ??




周りを見回しても便器しかない。

棚はおろか、ちょっと置いておくスペースもないのだ



(膝の上に乗せてしろってことか??)



しかし我が子はまだ生後1か月。
首も座っていない


そんな赤ん坊を膝に乗せて用を足せるのだろうか?



否ッ!


落ちたらどうする!?
そんな危険は冒せないッ!
 




 

3月10日(土)AM11:14

 
 
今まで全く意識したことがなかったが、そういえば赤ん坊を寝かせておく通称オムツ台の付いた「個室」に何度か入ったことがある。



今まではただの荷物置き付きの個室くらいにしか思ってなかったが、


 
まさに今必要なのはあのオムツ台だッ!





男子トイレを出て外を確認する

しかしそこに「個室」は無かった



脂汗が頬を伝い、滴り落ちるのがわかる
もうオレの GoldenGate は限界だった



 
(ど、どこだ?どこにあるんだッ!?)
 


 
辺りをいくら探しても見つからない。
 
 
 
薄れゆく意識の中で、近くにあったフロアガイドを確認する。
 


( 3階かッ 
 


3Fに障害者マークの付いたトイレがあった。
 
おそらくそこは個室で、あのオムツ台があるはずだ!
 
 



 

3月10日(土)AM11:16

 
 
(やっと、、、あと少しだ)

 

死力を振り絞って階段を上る。

気がつくと赤ん坊はホゲホゲ動いている



そして、踊り場から個室トイレが見えた


 
(あそこだ!あそこなら赤ん坊を安全に寝かせながら用を足せるッ)







長かった。



本当に長かった。



腹痛に襲われてから、実際の時間はわずか40分程度だろう




しかし腹痛に襲われている者にとってそれは

永遠とも感じる長い時間だったのだ





だが、それももうすぐ終わる!



この Ben-I と決着 (ケリ) をつける時が来たのだ!!










すると次の瞬間、意地の悪そうな太ったババアが個室に消えて行った・・・
 







(殺す。)




(あの豚を殺して、オレも死ぬ。)





一瞬、本気でそう思った。




しかし、オレには大切な赤ん坊がいる。



(生きろ!生きねばならんッ!)




でも、今はとにかくうんこしたい





限界をとっくに超えていたオレは、赤ん坊を膝の上に乗せたまま用を足すという苦渋の決断を下さざるを得なかった
 




 
意を決し、トイレに駆け込みドアを閉める

 
 
 
脂汗でビショビショになりながら、便器のフタを降ろして、赤ん坊を乗せる。


 
その隙にズボンとパンツを降ろして、



ホゲホゲ動く赤ん坊がずり落ちる前に再び抱き上げる。
 


便座に座ると同時にほとばしる BigBen
 
 
 
異常を感じ、ギャン泣きする赤ん坊
 
 
 
静かなトイレの一室は一瞬で修羅場と化したのだった
 
 
 
 
 
 
全てはオムツ台が無いことが悪いッ


何が子育て支援だッ!
男子トイレにオムツ台なんて見たことないぞ
所詮この国は、少子化を食い止めようなどとは本気で思っていないのだ
 
 
極度の腹痛からくる体の震えに耐えながらオレは、そんなことを考えていた
 
 
 


 

3月10日(土)PM2:00



美容院から帰ってきた妻に、今日あった壮絶な体験を話した。
 
 
オレ「男子トイレにはオムツ台なんてないから、育メンパパ達はどうしてるんだろうね?仕方ないからモモジリちゃんを膝の上に乗せながらウンコしたんだぜ。」 




 
妻「抱っこ紐すれば良かったのに」


 
 
オレ「え?」


 
 
妻「抱っこしながら用が足せるじゃん、抱っこ紐なら。トランクにあったでしょ?」
 
 


オレ「・・・・・」

 



 
かくして抱っこ紐という文明の利器があることを、便意のあまり完全に忘れていたオレ。そして新米パパの子育ては続く!
 

頑張れオレ!負けるなオレ!



 
 

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